説教原稿
2008年8月3日
「敵をあなたの手に渡された、いと高き神」
創世記 14章14-24節
8月に入りました。
うだるような猛暑の日々ですが、週の初め、神様がみ言葉から新しい導きを下さって元気づけて下さいますようにと、願います。
「若者も倦み、疲れ、勇士もつまずき倒れようが
主に望みをおく人は新たな力を得/鷲のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない。」イザヤ40:30-31
アブラムは、エジプトの地で、豪華けんらんな町並み、宗教文化を見て、その雰囲気にのみこまれてしまったことでしょう。神様のお守りにすがることを忘れ、自分の妻サライを妹と、偽ってしまいました。
しかし神様は、そんなアブラムたちをも守り、失敗の中から引き上げて下さいました。
それからまたカナンに戻り、以前礼拝した同じ場所で、アブラムは、礼拝しなおしました。神様だけを見つめて生きる。そう彼は誓って立ち上がりました。
甥のロトの家の者と、アブラムの家の者とが、家畜に食べさせる草のことで、いわばなわばりのことで、もめてしまいました。甥が引くのが筋でありましょう。しかし争いとなったというのは、ロトがしっかりと部下の手綱を引いていなかったため。いえ、ロト自身の、おじアブラムへの尊敬の気持ちが欠けていたゆえでしょう。
ひょっとしますと、彼には、叔父アブラムがエジプトで犯した失敗ゆえ、叔父を見くびっていたのでしょうか。
「おじさんの財産なんて、奥さんでだましてエジプトからくすねたものじゃないか。」
アブラムは、謙遜と寛容をもって、甥ロトに、好きな地を選びなさいと、切り出します。アブラムは、主なる神様をじっと見上げる、そんな人に変えられていました。
このことが大切です。
日曜日、礼拝をささげ続けること。このことが大切です。
私たちの視線を、ただじーっと、神様に注ぎ続けること。
そうすれば、私たちの問題は、もう解決したと同じなのです。
目の欲・目先の利益で、ロトは潤った土地に出て行き、下りにくだって死海の南、ソドムへと住み着きました。そこは、邪悪な文化が根付く土地でした。
そんなとき、ロトに思いもしなかった悲劇が襲います。
ソドム・ゴモラ・アドマ・ツェボイム・ツォアル。死海の南の5つの国の王たちが、遠くバビロンの王たちに反逆したのです。死海の南の王たちは、ずっとバビロンの王たちの支配下にありました。12年間、その支配に甘んじました。しかし、13年目、ついに彼らは時が来た、これからは俺たちは独立だと、5つの国は、同盟を結んで、遠くの国の支配者たちに背いたのでした。
その次の年、遠い国の4つの国の王たちは、どんどんと攻めてきました。その途中にある国々を蹴散らしながら、ついに死海の南、ロトが住んでいた潤った土地で、戦いが始まりました。
どう戦ったか、全く聖書には記述がありません。戦いが始まったかと思えば、もう次の行には、ソドムとゴモラの王は、逃げる時、アスファルトを掘った穴に落ちたとか、他の王は、山に逃げたとか。散々の結果となりました。
逃げる途中で穴に落ちたではなくて、逃げるために穴に隠れた、が正解かもしれません。
王が姿をくらまし、軍隊もバラバラ。ソドムとゴモラにある財産と食料はすべて奪われ、あわれ、ロトも、家の者も、財産もろともバビロンのほうから来た王たちに奪われ、連行されるという事態となりました。
ロトの家のものでしょう。バビロン捕囚、身ぐるみはがれて一生異国で奴隷生活というこの緊急事態に、連行される手から逃れ、おじさんアブラムに、最後の望みを託して助けを求めて命からがら飛び込みました。
さあここからが、見ものです。あのエジプトで命取られるを恐れて縮こまっていたアブラムが、この時どうするか。さあ、見ものです。
アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞きました。ああ、あんな身勝手な奴、どうにでもなってしまえ、恩知らずめ、自業自得、そんな風には考えませんでした。あんな大国に刃向ったら、こちらが散々な目に逢う、くわばらくわばら、そんな風にも考えませんでした。
アブラムは、これは主の戦いだと、思いました。
神様に愛され、祝福の契約をいただいている私の親族が捕虜にされている。これは必ず神様が守って下さると、彼は確信しました。
相手がだれであっても。エジプトに並ぶ大国であっても、自分たちがたった少数であっても。相手がカナン全域を次々と勝ち取った優秀な軍隊であろうとも。自分たちが、ほとんど戦いの経験のない者の集まりであったとしても。アブラムは、主の戦い、主が戦って下さる戦いだと、確信したのであります。
アブラムは、いち早く行動に移しました。
自分の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者318人。これらを招集しました。他からやってきた奴隷ではなくて、自分のところで生まれた奴隷です。そして訓練を受けた者たち。アブラムには、自分のために命をかけて戦う、全幅の信頼を寄せる、318人の勇士がいたのです。
しかしそうとはいえ、300人余りでは、余りに多勢に無勢です。しかし彼らは一つ心になって、自分の主人、アブラムの甥ロトを助けるため、威勢よろしく、出かけていきます。
なわばり争いで叔父アブラムの家に食って掛かったあのロトと、その手下の体たらく。それに比べて、彼らのためにと、火中の栗を拾いに行くような、勇敢なアブラムの手下たちでありました。
へブロンから北へ上りに上って250キロ。猛然と追跡するアブラムとその精鋭たち。ついに、北へ帰る略奪の軍勢に追いつきました。
相手は勝利の美酒に酔い、油断しているぞ、さあ夜、奇襲攻撃だ!ゲリラ戦だ!主の戦いだ、主がロトたちを解放して下さるんだ!エイエイオー!
300人がいくつかに分かれ、寝静まった大群のあちこちで、奇襲ののろしを上げました。
「ワアー、」
びっくりしたのはバビロンから来た全部隊です。
寝耳に水、青天のへきれき。
彼らは散り散りに逃げまどいます。ばらけて逃げていく本隊。もう取るものも取らず、敗走する彼らでありました。アブラムたちは、何十キロも追跡し、逃げる後ろ頭をはたいてはたいて、ついに300人の精鋭たちは、略奪されたすべてを取り返すことに成功したのでした。
穴の中に隠れていたソドムの王は、王の権威全くかたなしで、平民庶民のように、凱旋将軍アブラムを出迎えました。
帰り道、エルサレムに近いところでしょうか。不思議な不思議な人がアブラムのところにやって来ました。パンとぶどう酒を持って。
いと高き神の祭司、サレムの王メルキゼデク(義の王)です。
サレムとは、エルサレムのことです。エルサレムは、最古の町と言われ、その町は知られていましたが、この時はまだカナン、先住民の町のはずでした。
しかし彼は、いと高き神の祭司と語られています。選民の族長アブラムは、身を低くして、メルキゼデクの祝福を受けました。
「天地の造り主、いと高き神に/アブラムは祝福されますように。
敵をあなたの手に渡された/いと高き神がたたえられますように。」
彼は、イエス・キリストのひな型と呼ばれる祭司であり王である存在です。
メルキゼデクは系図もなく、突然ここに登場します。そしてアブラムを祝福しました。まだ祭司の制度が出来上がる前の話です。アブラハム、イサク、ヤコブ…その後で、レビの子らが任命されるべき制度でした。
アブラムは、突然やってきて、パンとぶどう酒と祝福を与えたこのメルキゼデクに、最上の戦利品の中から実に十分の一を捧げました。
パンとぶどう酒、律法を超えて祝福を与える方。サレム、シャローム、神との平和をもたらす方。イエス・キリストのことがここではっきりと示されています!
「天地の造り主、いと高き神に/アブラムは祝福されますように。
敵をあなたの手に渡された/いと高き神がたたえられますように。」
天地の造り主、いと高き方はいつも私たち教会の民とともにいまし、あらゆる悪や危うきから、私たちを守って下さいます。
パンとぶどう酒を携え、イエス・キリストが私たちを訪れ、神との平和と祝福を与えて下さいました。
それゆえ、すべては主のもの、私たちは主の圧倒的なお守りの中で、私たちの力は無に等しいのです。ただ神様にこそ、私たちは期待いたします。どんなときも、不可能に思えることも、果敢にあなたに期待いたします。ただ私たちはあなたを見上げるのみですと、捧げものをもって、神様に近づくのであります。
「あなたがたの富のあるところに、あなたがたの心もあるのだ。」ルカ12:34
私たちは、すべて神様から頂いたという感謝をもって、その中から一部を、神様にお捧げいたします。私たちには神様の都に思いも富も捧げて日々を過ごします。天に心を結びつけて歩むのです。
アブラムはもはや元のアブラムではありませんでした。
彼は神のアブラムとなったのです。
メルキゼデクは祝福を与えました。ソドムの王は、王位を守ろうとして、人を返してくれ、財産は取って下さいとアブラムにすがりました。
アブラムはここでソドムの王を打って王になることもできたでしょう。しかし彼は「天地の造り主、いと高き神、主に手を上げて誓います。 あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。」と言いました。
アブラムは、自分の成功に、酔いしれてはいませんでした。彼の眼は、ただ、天地の造り主、いと高き神、主に向けられていました。
私たちも、重心のおきどころはどこかと、教えられます。いつも主の後ろに隠れ、盾となっていただき、栄光をお返しする歩みです。主のみに頼る歩みです。
かつてはエジプトからもらって歩きました。しかし今は、神様にあって歩くアブラムでした。
へブロンのマムレの樫の木で同盟を誓った人たちにはちゃんと分け前を渡す配慮も、忘れてはいません。
アブラムは、神様によって立たされ、こうしていよいよ祝福の源として、信仰者の父として歩みます。
勇敢でかっこいい信仰のアブラム。これからも彼の歩みに、わが歩みを学びつつ、聖書を読み進めてまいりましょう。
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